セッケンの洗浄作用
セッケンを水に溶かすと,疎水性部分を内側に,親水性部分を外側にしたコロイド粒子をつくる。この粒子をセッケンの〔 ミセル 〕という。油は水には溶けないが,セッケン水を加えて振ると油は微細な小滴となって分散する。このような作用を〔 乳化 〕といい,この溶液を〔 乳濁液 〕という。また,乳化作用をもつ物質を〔 乳化剤 〕という。これは油分子がセッケンのミセル内に取り込まれるために起こる。
その他の性質
Ca2+やMg2+を多く含む水のことを硬水といい,セッケンはCa2+やMg2+と水に不溶な塩をつくるため硬水や海水では使用できない。セッケンは弱酸である脂肪酸(カルボン酸)と強塩基(NaOH)との塩なので,水溶液は〔 塩基 〕性を示す。
合成洗剤
硫酸ドデシルナトリウムC12H25-OSO3Naやアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムCnH2n+1-C6H4-SO3Naはセッケンと同じく疎水性の炭化水素基と親水性のイオンの部分からできていて,合成洗剤として用いられる。いずれも強酸のナトリウム塩だから,水溶液は中性を示す。Ca2+やMg2+とも沈殿を生じないので,硬水でも使うことができる。
例題 化合物A,B,Cはいずれも,水酸化ナトリウム水溶液中でヨウ素と加熱すると黄色沈殿を生じる。しかし,これら3種類の化合物のうち,銀鏡反応を示すのはAのみである。化合物Bを濃硫酸と混ぜて140℃に加熱すると,化合物Dが生成する。また,化合物Cを還元したのち,これを濃硫酸と加熱すると気体Eが発生する。Eは,臭素水を脱色する。次の問いに答えよ。
(1) A〜Eにあてはまるものを下の (ア) 〜 (ケ ) から選び,記号で示せ。
(ア) CH3CH=CH2 (イ) CH3CH2COOH (ウ) CH3CHO (エ) CH3COCH3 (オ) HOCH2CH2OH
(カ) CH3CH2CH3 (キ) CH3CH2OH (ク) HCOOH (ケ) CH3CH2OCH2CH3
(2) 文中の下線部の反応の名称と,黄色沈殿の分子式を記せ。
解答 (1) A (ウ) B (キ) C (エ) D (ケ) E (ア) (2) ヨードホルム反応CHI3
A,B,Cは,ヨードホルム反応を示すのでCH3−CH(OH)−RかCH3−CO−Rの構造をもつ。この構造をもつのは(ウ),(エ),(キ)である。さらに,Aは銀鏡反応を示すので−CHOをもつ。よってA=(ウ)(B,C=(エ),(キ))となる。
Bは,脱水されるので−OHをもっている。よってB=(キ)(C=(エ))となる。BはCH3CH2OHで,これを140℃で脱水したものがDである。この温度での脱水では,分子間脱水なので,Dは,ジエチルエーテルCH3CH2−O−CH2CH3 (ケ)となる。
Eは,(エ)CH3COCH3を還元してさらに脱水することによって,得られる。(エ)CH3COCH3を還元したものは, CH3CH(OH)CH3である。さらに脱水したものは,Br2が付加するので二重結合をもつ化合物になる。つまり,この脱水は分子内脱水で,得られるEはCH2=CH−CH3
(ア)となる。
例題 次の文を読み,下の問いに答えよ。
アルコールA,B,C,Dはそれぞれメタノール,1-プロパノール,2-プロパノール,2-メチル-2-プロパノールのいずれかである。各アルコールをおだやかに酸化したところ,AからはアルデヒドEが,BからはケトンFが,CからはアルデヒドGが得られたが,Dはほとんど酸化されなかった。アルデヒドEとGは容易に酸化されて,それぞれカルボン酸Hとカルボン酸Iになる。Iは@銀鏡反応を示す。AケトンFは酢酸カルシウムを乾留することによっても得られる。
(1) アルコールA〜Dの名称を記せ。
(2) E〜Iの構造式を記せ。
(3) 下線部@の原因となる官能基の名称を記せ。
(4) 6.4gのアルコールCをすべて酸化して,カルボン酸Iにした。得られるIの質量は何gか。
(5) 下線部Aの反応を,化学反応式で表せ。
(6) カルボン酸Hに炭酸水素ナトリウム水溶液を加えたときにおこる反応を,化学反応式で表せ。
(1) A 1−プロパノール B 2−プロパノール C メタノール D 2−メチル−2−プロパノール
(2) E CH3CH2CHO F CH3COCH3 G HCHO H CH3CH2COOH I HCOOH
(3) アルデヒド基 (4) 9.2〔g〕 (5) (CH3COO)2Ca → CH3COCH3 + CaCO3
(6) CH3CH2COOH + NaHCO3 → CH3CH2COONa + CO2 + H2O
AとCは,酸化するとそれぞれアルデヒドE,Gを生じるので,第一級アルコール(メタノールか1−プロパノール)である。さらにアルデヒドEとGは酸化されるとそれぞれカルボン酸H,Iを生じる。カルボン酸Iは銀鏡反応を示すことから,ギ酸HCOOHであると推測される。そのため,アルデヒドGはホルムアルデヒドHCHO,CはメタノールCH3OHであることが分かる。よって,Aは1−プロパノールCH3CH2CH2OH,EはCH3CH2CHO,GはCH3CH2COOHであることが分かる。
Bは酸化するとケトンFを生じるので,第二級アルコール(2−プロパノール)であることが分かる。よってFはアセトンCH3COCH3であることが分かる。
Dは酸化されないことから,第三級アルコール(2−メチル−2−プロパノール)であることが分かる。
(4) 46×6.4/32=9.2
(6) 弱酸の遊離による反応。弱酸の塩の水溶液に強酸を加えると,弱酸ができる(強酸は塩になる)。これを弱酸の遊離という。また,弱塩基の塩の水溶液に強塩基を加えると,弱塩基ができる(強塩基は塩になる)。これを弱塩基の遊離という。
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